ぞうくんのあめふりさんぽ
なかの ひろたか さく・え 福音館書店
文句なしに楽しいお話です。子どもたちの大好きな、ぞうが、わにが、かばが、これまた子どもたちが大好きな雨の中、お散歩に行くのですから。
この絵本のすてきな特徴は、ぞうたちがとても大きいということ。背景の絵が細かく描かれ、そこに生き物が存在しているという絵本が多い中、「ぞうくんのあめふりさんぽ」は、ページを開くと、ぞうがどーんと現れます。大きいだけでなく、やさしく温かい生き物たちの存在感。子どもの心を捉えないわけがありません。
当ブログ「絵本にしよう」では、毎回表紙の絵を模写して、その絵とともに絵本の紹介をしています。わざわざ模写しているのは、表紙をよくみると、たくさんのことが「わかる」からです。「わかる」というよりも、「感じる」かもしれません。
例えば「ぞうくんのあめふりさんぽ」のタイトル文字、「ぞ」の点々はまるを二つ繋げています。勝手な解釈ですが、作者は文字を書くことも楽しんでいるのかなと、読み取ることもできます。そして生き物を描く線。一本の線ではなく、短い線を少しずつつなげて描いてあります。時間もかかりますし、集中力もいります。こんなにじっくり描かれている生き物たち・・・作者のゆったりとした大きな心が伝わってくるようです。
そして全ページを通して、細かな線の雨が降り注いでいます。
雨の大好きな子どもの心がそのまま本格的な絵になった、そんな絵本です。