· 

大切なお願い ーSNS投稿に寄せてー

長男が生まれてしばらく、毎日続く子育てに行き詰まり、子連れでもほっと一息つける場所を探しましたが、なかなか見つかりませんでした。

当たり前ですが、子どもの遊び場はどこも子どもが主体。大人が落ち着ける場所には子どもは連れて行きづらいです。

子どもと大人の居場所は分断されていて、子どもの場所には、子どもとその保護者しかいないことに違和感を感じました。子連れは個室だとか、カフェの2階が子連れ専用だとか。お互いにとって必要な配慮の結果そうなっているとしても、大人と子どもが自然と混ざることができないのが残念でした。もちろん例外も多々ありますが。

 

ちぇすなっとは絵本を中心とした古本屋で、奥にはカフェがあります。子どもも大人もどちらにも居心地のいい場所を作りたくて、長男が3才の時に夫婦でオープンしました。だから、店内には子どものおもちゃが点在していますし、できるだけ見通しよくしています。授乳やオムツ替えの部屋も準備しました。

大人の方にも子連れの方にも来てもらいたいと当初は安易に考えていました。

でも、商品である本を大切にしてもらえないことが想像以上に多いことに、オープンからの5年間頭を悩ませてきました。

その要因の一つは、お客さんと私たちの店に対する認識のずれだと感じています。「子連れOKの店」という私たちの主張が曖昧すぎたと反省しています。

 

子連れOKの店で本を読んでも大丈夫ということは、本を雑に扱ってもいいということではないのですが、そういう認識をされているだろう場面が多々あります。子どもが本を片っ端から落としたり、床に置いたり、端を持って引きずっていたり、ページをぐしゃっと摘んでめくっていたりということが、日常的にあります。

私たちとしては本を販売している店のつもりが、子どもの遊び場に来る感覚で来店しているようなお客さんが少なからずいます。

もちろんそうではない方の方が大半ではありますが、店の意図が伝わっていない場合、お客さんに側にしても、思ったより子どもをほったらかしにできないという物足りなさにつながっている様にも思います。

 

私たちがあまりにもやんわりと「子どもを連れてきて大丈夫です」と主張したことが誤解を招きました。

その後SNSや冊子などで紹介される中で、ニュアンスがさらに変わって伝わったことも大いにあります。

5年も経って今更ですが、この認識のずれを変えたいのです。

 

本を大切に扱ってほしいという主張も今までは強くできませんでした。

子どもは目に入るものはついつい触ってしまうのだから、それを指摘されるのはその保護者にとってはとても辛いものです。何よりも子どもを連れて店に行くのは迷惑だろうかと来店を躊躇している方が来づらくなるのではないかという懸念もあります。

私たち自身も、子どもを連れてどこかの店に入る時はとても緊張します。注文の多い店にはまず行こうとは思いません。そういう主張の強い店は全力で避けてきました。だからそんな店になることへの怖さがいつもありました。

 

ですが、きちんと店の意図を伝えるのは誠意でもあるとオープンから5年、やっと思えるようになりました。

「本を大切にしてほしい」という願いと「本を手当たり次第触ってしまう子どもを連れて行っていいだろうかと躊躇している方にも来て欲しい」という願いは、矛盾している様に聞こえるかもしれませんが、どちらも私たちの中にあります。

「本を大切にしてください」と訴えているからと言って、「子連れで来ないでください」と言いたいわけではありません。

 

店の許容範囲を正確に知った上で、今の年齢のこの子は行けるか、友人と一緒だったらどうか、今回は下の子一人だけで連れてこようかなど、子どもの性質や年齢を踏まえて、行くかどうかの判断をしてほしいと思います。

そして、「絵本の店」だから大人だけでは行けないと思っている方にも、大人の方だけでも来店できる店だと伝わればと思います。

 

ですので今回、緊張しながらも、子連れでの来店にビクビクしている人の足枷となる投稿でなければと願いながら、私たちの主張もしていこう、とSNSでこんな投稿をしました。↓

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 【大切なお願い】

 

SNSや冊子等でちぇすなっとを紹介して頂くことが増えました。

とてもありがたい反面、ちょっとした表現に違和感を感じることもあります。

私たちの目指している店とは違う解釈がされていることが時々あるからです。

 

店の紹介を読んで、楽しみに来てみたけれど

「思っていたのと違う」となるのはとても残念なことです。

ですので、ちぇすなっとがどのような店か

私たちの言葉で改めて説明したいと思いました。

長文ですが読んで頂けましたら幸いです。

 

まず、ちぇすなっとは

『本読み放題』、『子ども遊ばせ放題』の店ではありません。

 

ちぇすなっとは、『絵本屋』です。

絵本を中心とした古本を販売している店で、カフェスペースもあります。

最近では絵本以外の本の取り扱いも増えました。

すべて一冊ずつ選書して仕入れていますので、

古本ではありますが、新品に近い状態の本も多いです。

本は購入前に試し読みをすることができますが、

全て販売用ですので、丁寧な取り扱いをお願いしています。

 

特に小さな子どもさんが絵本を読むと、

読み跡がついたり、ページが折れたりしてしまうことがあります。

大人の方が手に取って読んでくださいますようお願いします。

小学生くらいの方だとしても、ページをくしゃっと掴んだり、

棚に戻す際、無理に押し込んでカバーが折れたりしていることが多いです。

大切な商品ですので、大人の方が注意を払っていただきたいと思います。

 

遊び場としての子どもスペースはありますが、

ぐるりと仕切りで囲われておらず、おもちゃも少しですので、

子どもだけで勝手に遊ばせておけるのはほんの数分です。

子どもスペース近くの棚には商品の本も並んでいますので、

どうしても大人の介入が必要になってきます。

 

特に複数人の子どもたちが集まる場としては不向きな小さいスペースです。

 

ベビーカーで赤ちゃんが寝た合間に大人がコーヒーを飲みに来たり、絵本を選んだり。

親子で絵本を探して、カフェでいつもと違う時間を過ごし、たまにおもちゃで遊ぶ。

ちぇすなっとはそのくらいの小さな店です。

「子どもを遊ばせて、大人がゆっくりできる店」というよりは、

「ほっと一息つける」くらいの店です。

 

ちぇすなっとは大人の方のみの利用も多い店です。

「大人一人でも居心地のよい店」ということも大切に、

本屋としての本の品揃え、コーヒーの美味しさ、

何より建物全体が醸し出す落ち着いた雰囲気には気を遣っています。

これは矛盾しているかもしれませんが、

「大人一人でも居心地のよい店」でこそ、

子どもを連れてきた時にほっと一息つけるのだと考えています。

「大人が行きたいと思える場所に、子どもを連れて来られる」

そんな風に思ってもらえることが大切だと思っています。

子育て中の方も、そうでない方にも、小さな気分転換に利用していただけたら嬉しいです。

 

絵本の購入、カフェの利用に来たお客さんが、一人で、友人と、あるいは子どもと、

特別な時間を過ごせる場であり続けるために、

日々、本を仕入れ、一冊ずつ心を込めて棚に並べています。

 

そのために、一人ひとりのお客さんが、

棚の本は誰かが購入していく本という前提のもと、

大切に手に取り読んで頂けたらうれしいです。

 

私たちも居心地のよい店を目指してこれからも精進していきます。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

ちぇすなっと

 

[@chestnut_ehon 2025.6.2投稿より]

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

個性のある店ではあっても、店の人が主張を押し付けてこない敷居の低い店を目指したいといつも思っています。

でも大切にしている本を尊重してもらえなかったり、他のお客さんの迷惑になるような行動には、こちらも一声かける強さは持ちたい。5年間店を続けてきて、なんとかそこまで思える様になりました。

 

子どもの存在が迷惑ではなく、大人も子どもも自然に集える場が増えてほしいと願いっています。

それは、その保護者が全ての責任を負うことでもないと同時に、子どもだから何でもやっていいということでもありません。

 

私たちの次男は先日8ヶ月になりました。

子どもを連れての外出は緊張します。迷惑をかけないか、気が気ではありません。

だからこそちぇすなっとは、赤ちゃんが泣いたら、泣いても大丈夫と、場の雰囲気や声掛けなどで伝えられる様になりたいと思いますし、子どもが走り回っていたら、寄り添いながらも、やりすぎた場合はストップと伝えられるようになりたいです。

そして本は、大切に読んでもらえていなかったら、声をかけられるようになりたい。

ちぇすなっとの許容範囲を適切に伝えられるようになることが、本屋としての場を守っていくことだと今は思っています。

 

ちぇすなっとは大人の方一人のお客さんも多いです。

だからと言って子どもはうるさいからだめということではありません。

 

子どもも来てほしい。

大人だけでも来てほしい。

自然と共存できたらいい。

 

今私たちが住んでいる地域でも、長男が赤ちゃんだった頃の8年前に比べ、子ども向けのサービスを提供する施設や場が増えたことを実感しています。公共の施設だけでなく、子どもの遊び場を備えた商業施設も増えています。と同時に少し過剰なサービスに私たち自身も埋もれつつある気配を感じます。

子連れの外出は必死ですから、様々なサービスは本当に心から助かりますが、サービスが手厚いからと言って、受け入れられていると感じるわけではないと今8ヶ月の子を持つ親としては思います。子ども連れはこちらへと分けられることで、いつも少し寂しい気持ちが残ります。

そんな中、心から子どもを受け入れてくれる場に行くと心底ほっとします。サービスの量ではなく、心遣いに助けられることが多々あります。

「ここにいていいよ」というメッセージこそが最高の安心感だと現在進行中の子育ての日々から実感しています。だからこそ、子どもを連れている責任感は持つようにしたいとも思うのです。

 

私たちの店も居心地の良さを維持できるように精進していきたいです。

子ども向けのサービスは小さな店ですので限界がありますが、できることは維持していきたい。

何よりも絵本屋としていい本を揃えていきたいです。

 

ちぇすなっとでコーヒーを飲むお客さんが、小さな子どもを見て微笑む姿を見ていると、様々な人たちがさりげなく交わることの素敵さを感じます。

 

ちぇすなっとは小さな店ですが、公園、電車、店など、人の集まる場は、場の作り手と使う側が相互に尊重し合うことが大切なのだと思います。

そしてその先に、子どもがその中の一人として周りにいることが、自然な社会になっていってほしいと思います。