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移動のお供

昨年秋に息子が腕を骨折し、何度も病院へ通うという経験をしました。

家から1時間ほどの大きな病院だった為、移動距離も待ち時間も長く、私のリュックは、もしもの時用グッズではちきれそうでした。なにしろじっとしていられない息子だからこそ骨折をしたのであって、電車でも、病院でも、ただじっとしているなんてことはなく、気をそらすための何かが必要でした。リュックの中身はお菓子、迷路や間違い探しなどのワークシート、道中に購入した新しいおもちゃ、時にはお絵かきセットまで。新しいおもちゃは効果てき面で、病院への道すがら100円ショップでブロックなどを買い、それを組み立てることで長い待ち時間を乗り切っていました。

 

でも病院では、今からギプスを外すだとか、痛いところを見てもらうだとか、待ち時間に緊張を伴うこともあります。不安になったり、痛くて泣いていたりの時は、ブロックを組み立てるなどとてもやる気がしません。お菓子ですら効果がなかったりします。

そんな時になくてはならなかったのが、絵本です。

 

持ち運ぶ絵本としてはソフトカバーの「こどものとも」が薄くて軽くて一番でした。

いつも4冊程家の本棚から選んでリュックに詰めて出発しました。息子が選ぶ場合もありましたが、基本的には私が選んで、電車や病院で必要になった時に「今日はこれ」とお楽しみのように取り出すと喜びが増しました。

「こどものとも」ならなんでもいいというわけでもありません。息子にも私にもフィーリングの合っている絵本であることは大前提でした。

 

選ぶ基準としては

・ある程度長さのあるもの

・最近読んでいなくて息子が大好きなもの

・世界観があって入り込めるもの

 

物語の世界に入り込むことができると、痛みも不安も不思議とその時間だけは消えていくようです。病院で読む絵本は、家でのそれとは違いました。物語の世界に入りながらも、家に残してきた温かさを再体験しているような気持ちになったものです。夜、あたたかい布団の中で息子に読んでいる時間につかの間トリップしたような、そんな感覚になりました。おそらく息子もそうだったのではないか、そうだったらいいなと思うのです。

 

絵本の中にはそれを読んだ時の思い出がつまっていて、いつでもどこでも取り出せる。

そんなことを感じた病院通いでした。

年も明けて息子の腕はすっかり元通り。今は元気に走り回っています。